
ある日の夕食のときでした。
小3の娘が、ふと、こう言ったんです。
「今日ね、学校で押されて、いやだった…」と。
……え。
正直、びっくりしました。
こういう話が、娘の口から出てきたのは、初めてで。
いつか、こういう日が来るのかな、とは思ってたけど。
それが、まさかの今日。
しかも、夕食の最中に、唐突に。
心の準備なんて、まったくできてませんでした。
『落ち着け。しっかりしろ、わたし』
頭の中で、自分にそう言い聞かせます。
ここ、大事な場面やで、と。
聞けば、誰にされたかは、わからないみたいで。
そして、こうも言いました。
「先生には、言わんといて」
ここでようやく、別の感情も湧いてきます。
正直に言うと、心の中は、炎がメラメラ。
わが子が、いやな思いをした。
平気でいられる親なんて、いません。
でもね。
その炎も、びっくりも、ぐっと、奥にしまいました。
娘の前では、いつも通りの母でいよう、と。
娘の顔を見て、まず言ったのは、これでした。
「いやだったね」
「話してくれて、ありがとう」
それから、こう続けました。
「いやなことは、いやって言っていいんよ」
「先生には言わんといてって言うなら、言わんよ」
そう伝えたら。
娘の顔が、ふっと、明るくなったんです。
ああ、そうか、と思いました。
この子は、解決してほしかったわけでも、犯人を探してほしかったわけでもなくて。
ただ、聞いてほしかったんだな、と。
「いやだったね」の一言で、安心したような、その表情を見て。
それが、全部の答えな気がしました。
でも、わたしも親なので。
ひとつだけ、これは伝えておきました。
「次もし、同じことがあったら。
そのときは、先生と話するからね」と。
おだやかに、でも、はっきりと。
娘の「言わんといて」は守る。
守るけど、ママはちゃんと見てるよ。
放っておくわけじゃ、ないからね。
——そういう気持ちを込めて。
心の中の炎は、まだメラメラしたままでしたけどね。
そして、それから数日後のこと。
また、話してくれました。
今度は、ちょっと状況が動いたようでした。
一度目とは少し違うように感じたので。
このときは、先生に連絡を取って、様子を確認することにしました。
詳しいことは、ここには書きません。
子どものことだし、相手のお子さんのこともあるので。
ただ、結果として。
先生がその場で、子どもたちと話をしてくれて。
ちゃんと、収まっていました。
先生は「心配しすぎないでくださいね」と言ってくれました。
だからわたしも、こう伝えておきました。
「心配しすぎてるわけではなく。実は数日前にも、似たことがあって。
先生は「すみません、それは把握していませんでした。」と言っていました。
そのときは本人の気持ちを尊重したんですが、2回目ということもあり、気になったので状況を確認したくて連絡しました」と。
責めるためじゃ、ありません。
ただ、状況を共有して。
先生にも、ちょっと気にかけておいてもらえたら。
それだけで、心強いので。
連絡することに、迷いは、あまりなかったです。
今回は、娘自身が「先生に話せた」と言っていたから。
あ、ここは、親も一緒に話しておくときだな、と思ったんです。
それに、娘にもちゃんと伝えました。
「今回は、先生とお話しするからね」と。
こっそりじゃなくて、娘も知っている。
そのうえで、動く。
子どもたちの関係って、この先どうなるか、わからないですよね。
今は小さなことでも、これから、どう転ぶかわからない。
だから、
「親も、ちゃんと見てるよ」ということを。
今ことがあった時に、残しておきたかったんです。
親から、こういう連絡があった。
そのとき、こう話した。
——そういう記録が、ひとつあるだけで。
もし今後、何かあったときに、きっと意味を持つ。
そう思って、連絡しました。
ここまで書いて、ふと思ったことがあります。
一度目に「話してよかった」って、娘が思えたから。
二度目は、もう少し自分から動けたのかもしれない。
ちゃんと相手の子にも自分の気持ちが言えたようだし。
家で受け止めてもらえた経験が。
外で、どうにかしようとする力に、つながっていくのかな、と。
そう思うと、あの夕食の「いやだったね」は。
間違ってなかったのかな、と思えました。
仲のいいお友達がいても、些細なことで変わったりする。
それは、大人だって同じこと。
学校でのことに、親はずっとは、ついていけない。
外の世界まで、ぜんぶ守ってあげることは、できないから。
でも。
「家が安全地帯であること」だけは。
親の側で、守りきれる。
そこだけは、ずっと大切にしたい。
そう思った、数日間でした。
何かあっても、なくても。
ここは、いつでも話していい場所だよって。
いい子でも、わがままな日でも。
あなたが「ただいま」って帰ってくる。
それだけで、わたしは、うれしい。
何ができても、できなくても。
あなたが、いてくれる。
それだけで、いい。
……それが、ちゃんと伝わっていますように。
今日も読んでいただきありがとうございました。
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